LASER AND MATERIALS PROCESSING LAB. for Synthesis of Ceramics

伊藤暁彦研究室 (無機材料合成研究室) は、横浜国立大学大学院環境情報研究院にて、気相法とレーザープロセスを活用したセラミックス材料の研究開発と学生教育を行っています。2016年に伊藤暁彦がPIとして赴任、2017年に第一期学生が配属となった新設の研究室です 。2019年3月に第一期院生を輩出、現在は合成系・同定系の設備導入が一段落し、研究成果の投稿や測定系の立ち上げ、教育環境のさらなる向上に取り組んでいます。

Research Interests and Strengths

伊藤暁彦研究室では、化学気相析出 (CVD; Chemical Vapor Deposition) 法や物理気相蒸着 (PVD; Physical Vapor Deposition) 法を用いたセラミックスコーティングおよびバルク結晶の気相成長に関する研究に取り組んでいます。セラミックスコーティングやバルク結晶に、自己配向成長や自己組織化を通じて革新的な機能性を発現させることで、実用工業材料に新たな価値を付与することに興味を持っています。「気相法の限界を超越した新たな材料化学と環境材料の創出」に向けて、新しいセラミックスコーティングとバルク結晶成長の材料設計指針を提案していきます。

この目的を達成するために、我々の研究室ではレーザー光を物質合成プロセスに活用しています。我々が提案するプロセスには、下記の3つの強みがあります。

 

高速気相合成

卓越した成膜速度による開発サイクルの高速化、プロセス温度の半減、非平衡相や低温相の結晶成長、積層化や複雑形状基材への直接合成といった強みを有しています。 

自己組織化

気相プロセスにて、自己結晶配向成長やナノ複合構造形成を実現しています。気相からの高次ナノ構造の形成技術は、コーティングやデバイスの性能を飛躍的に発展させます。 

マルチスケール

厚膜コーティングやバルク結晶の気相成長だけでなく、これら物質中に生じるナノ構造にも注意深く着目しています。また、バルク材料の微粒子化・薄膜化といった研究にも対応できます。

  • CVD法は、気相からの析出反応を利用して、基材上に無機固体結晶を得る方法です。有機金属化合物 (metal-organic compound) を原料前駆体に用いることで大抵の元素をカバーしており、本研究室では原料ガス3系統+反応ガス1系統の4元系まで同時に原料導入できます。薄膜 (nm) から厚膜 (μm~mm) に対応できます。
  • PVD法で現在稼働しているのは、PLD (pulsed laser deposition) 法です。固体ターゲット表面をレーザー集光によりプラズマ化することで、対象物質を薄膜化 (nm) することができます。スパッタ法のように定形・大口径のターゲットは必要なく、バルク体の破片を薄膜化することも出来るのが利点です。

Research Topics

環境に調和した物質やエネルギーの利用に対する関心が高まる一方、リスクマネジメントを基盤とした持続可能な人工環境の創出が求められています。例えば、環境浄化フィルターの高性能化、高温水蒸気下で連続動作が可能なターボファンエンジンの開発、環境モニタリングの高感度化やIoT対応があります。

これらの要望に応えるため、新しいコンセプトに基づいた合成プロセス・無機環境材料の開発、そして様々な社会課題の解決を可能とするセラミックス材料の機能と構造の創製に取り組んでいます。具体的な研究内容は、論文化され次第、順次掲載していきます。

YAG

革新的光学結晶

環境モニタの高感度化、
光学材料の高輝度化

GE90

耐環境性被膜

内燃機関の高効率化、
高信頼性化

Spark

ナノ構造触媒

環境浄化システムの高性能化

IoT

機能性薄膜

物性評価を通じた機能性材料の探索

Target Materials

伊藤暁彦研究室では、豊富なセラミックス材料を結晶学の観点で整理しながら、材料合成に関する研究を進めています。セラミックス材料は、陽イオンと陰イオンが織りなす多様な結晶構造を持ち、合成実験の過程においては多彩な結晶自形を呈して、我々の目を楽しませてくれます。一方、セラミックス材料の持つ様々な機能性は、その結晶構造に由来する物性から導かれます。

すなわち結晶構造は、材料合成プロセス、組織・形態制御技術、化学結合や相安定性、機械的特性や物性発現に関するそれぞれのトピックスを理解する手助けとなり、セラミックス材料の新たな機能と構造を創製するためには、結晶構造を意識した材料設計指針を確立する必要があります。

以下は、本研究室が研究対象としている結晶構造群の一例です。現在は、酸化物セラミックスが主体ですが、炭化物や窒化物などの非酸化物セラミックスにも展開していく予定です。それぞれの無機化合物と関連する研究成果は、順次掲載していきます。

Corundum

Corundum
Alumina, ruby, and hematite

Pyrochlore

Fluorite and pyrochlore
Hafnia, zirconia, yttria, and lutetia

Garnet

Garnet
YAG, LuAG, and YIG

Perovskite

Perovskite and rocksalt
YIP, YAP, and Ruddlesden-Poppers

Spinel

Spinel and olivine
Spinel, gamma-alumina, and magnetite

Hexaferrite

Hexaferrite
M-type magnetoplumbite

Rutile

Rutile
Titania

Pyrosilicate

Silicate
Silica, and rare-earth silicates; Silicon carbide

Wolframite

others
Wolframite

Education

教育方針:伊藤暁彦研究室は、「自分のひらめきと材料合成を強みに、材料化学の探求と環境問題の解決を担う人材の育成」を教育方針としています。我々は実験主体の研究室であり、自作の装置を用いて無機材料合成を行い、自前の装置を用いて材料評価を行っています。「実際に材料を合成し、手に取り、観察できる点が強み」であることから、研究内容を主体的に判断するのは指導教員や分析装置ではなく、学生自身であるように指導しています。

一方、自作の合成装置には、なかなか合成実験がうまくいかないといった不安な時期が付き物ですが、その分、自ら考えて装置や条件を修正し、所望の物質が合成できた瞬間の喜びは何物にも代えられません。合成実験を軌道に乗せた学生には、無数の合成ルートや合成物の可能性が拓け、時には我々の予想を越える実験結果が待っています。

人材育成像:研究室ゼミや他大学ラボとの合同合宿、対外的な研究発表を通じて、下記の5つの力を養う教育を心がけています。

  1. 技術者・研究者としての確固たる基礎体力
  2. 自分の求める知識にたどり着く力
  3. 自分の立ち位置を理解する力
  4. 課題を発見し、解決法を提案する力
  5. 自分の知見を発表する力

また、伊藤研究室が様々な学科出身の学生によって構成されていることは、教育環境を豊かにしている大きな特色のひとつです。化学出身者は化学結合に、材料出身者は組織制御に、物理工学出身者は電子物性に、それぞれ強みを持っており、無機固体結晶の合成を共通軸として互いに切磋琢磨しています (→ 研究室メンバーやゼミ活動を見る)。

求める学生像:無機固体結晶の箱庭感が好きな学生、レーザーの輝きに魅せられた学生、実験装置は自作したいgeekな工作員、を挙げています。研究室見学は、随時受け付けています。


担当講義:学部生向けとして、無機化学I (1年次), 化学生命基礎演習 (1年次), 化学生命基礎実験II (2年次), 無機固体化学 (3年次), EP実験I (3年次), EP演習III (3年次) などを、大学院生向けとして、環境材料設計学、人工環境概論、物質・生命と環境などを担当しています。

Collaboration

産学連携について:主な実施形態として、(I) 当研究室と共同または分担しての実施、(II) 担当学生等を配置しての実施、(III) 民間企業等の研究者が当研究室に来訪・滞在しての実施があります。(IV) 技術相談や学術指導にも応じている他、(V) 学生教育・研究活動の支援を目的とした寄付金の受け入れも行っております。これら産学連携やご寄付の取り組みについては、本学研究推進機構の各制度 (ripo.ynu.ac.jp) に準じます。

当研究室所有の合成装置に対しては研究実施内容に合わせて手を加えて頂いたり、優先または占有装置を製作することも可能です。契約内容に応じて研究室所有のX線回折装置と卓上走査型電子顕微鏡をお使い頂けます。高速化学気相析出装置を用いた共同研究の場合には、合成 → 相同定 → 形態観察を一日のうちに実施でき、日単位で研究計画を立てることが可能です。

研究委託のねらい:(i) 現在、CVD技術を有しており、卓越化 (高速成膜・自己結晶配向・組織制御) を模索または実装したい。小回りの利く合成装置で試してみたいことがある。(ii) 現在、各種コーティング技術を有しているが、CVD技術をラインナップに加えたい。(iii) 固相法・液相法ではうまく合成できない物質があり、気相法で薄膜や粉末・バルク体を合成して諸特性を評価してみたい。(iv) 自社製品にセラミックスコーティングを施すことで、付加価値を持たせたい・他社品と差別化したい。(v) コーティング技術への投資や当該分野の人材育成を支援したい。

産学連携やご寄付にご興味をお持ちの方は、ito-akihiko-xr _at_ ynu.ac.jp もしくは本学産学官連携推進部門 (ripo.ynu.ac.jp) までご連絡ください。

Contact

Postal code: 〒240-8501

Addr: 横浜市保土ケ谷区常盤台79-7
横浜国立大学 環境情報1号 (S7-5) 棟 803号室


Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University

79-7, Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501, Japan


Tel: +81-45-339-XXXX

E-mail: ito-akihiko-xr _at_ ynu.ac.jp

 

Access

  • 新横浜駅より約20分 (羽沢横浜国大駅から徒歩15分含む)
  • 東京駅より約40分 (新横浜駅経由)
  • 横浜駅より約30分 (相鉄バス 浜11系統:横浜駅西口→釜台住宅第2 下車)
  • 横浜新道 常盤台IC/第三京浜 保土ヶ谷IC/K2 三ッ沢ICすぐ