第37回セラ協関東支部 ★ 奨励賞

第37回 日本セラミックス協会 関東支部研究発表会が、2021年9月21日(火)-22(水)、オンライン開催されます。伊藤研究室からは、梅堀、川田、出口、三觜、藤江および伊藤が参加しました。

研究発表を評価して頂き、三觜が奨励賞を受賞することができました。研究内容と受賞者の写真を添えた学府のリリースは、次の通りです:三觜

発表題目は「化学気相析出法によるAl2O3-Y3Al5O12複合膜の合成とその蛍光特性評価」です。三觜さんは、アルミナ-イットリア共晶系の有機金属化学気相析出 (MOCVD) に関する研究を重ねる中で、気相からの秩序構造の形成を見出してきました。今回、透明なアルミナ母相中にイットリウムアルミニウムガーネット蛍光体がナノレベルで秩序構造を形成した複合膜を合成し、その放射線誘起蛍光特性を報告しました。三觜さんの優れた研究成果およびプレゼンテーション能力が高く評価され、今回の受賞となりました。 

Japan-India YNU symposium 2020

2020年12月27-28日に、Japan‐India YNU Symposium 2020がオンライン開催されました。伊藤研究室からは、松本、川田、藤江、三觜が参加して、研究成果をオンラインポスター発表しました。

第15回セラフェス ★ 優秀発表賞

第15回セラミックフェスタin神奈川が、2020年12月12日(土)、オンライン開催されました。セラミックフェスタin神奈川は、神奈川県下でセラミックス研究を推進する大学研究室間の学術交流を目的とした研究発表会です。

伊藤研究室からは、三觜と藤江が参加して、研究成果をオンラインでポスター発表しました。研究発表を評価して頂き、藤江が優秀発表賞を受賞することができました。研究内容と受賞者の写真を添えた学府のリリースは、次の通りです:藤江

発表題目は、「化学気相析出法を用いたSrハフネート膜の合成と蛍光特性」です。Srハフネートは、密度が高く、実効原子番号が大きいことから、放射線を可視光に変換するシンチレーション結晶として期待されます。しかし、融点が高いことから、溶融凝固法や焼結法による透明蛍光体の合成が困難でした。藤江さんは、気相法による高速エピタキシャル成長を提案し、これを実現するためにまずSr有機金属化合物原料の選定を行いました。次いで、Srハフネートの透明厚膜蛍光体の高速気相成に成功し、その成長様式や蛍光特性を報告しました。藤江さんの優れた発表内容およびプレゼンテーション能力が高く評価され、今回の受賞となりました。

MRM Forum 2020 ★ 優秀若手発表賞

MRM Forum 2020 が、2020年12月7日(月)~9日(水)、オンライン開催されました。 伊藤研究室からは、松本、三觜、藤江が参加し、TS-9 Smart processing のセッションにて研究成果をオンラインポスター発表しました。

研究発表を評価して頂き、松本が優秀若手発表賞を受賞することができました (MRM Forum 2020公式発表)。研究内容と受賞者の写真を添えた学府のリリースは、こちらです。

発表題目は、「化学気相析出法を用いたHfO2透明厚膜の高速エピタキシャル成長とその蛍光特性評価」です。がんの早期発見や空港での手荷物検査の場では、X線を用いた画像診断法が用いられます。少量のX線照射で効率よく撮像を行うためには、優れたシンチレータ結晶が求められます。酸化ハフニウム (HfO2) は、高いX線阻止能を有することから、シンチレータ材料として有望です。一方、融点が高く温度変化に対して可逆相転移を示すことから、従来の溶融凝固法での結晶育成が困難でした。松本さんは、気相法を用いた酸化ハフニウムの透明厚膜蛍光体の高速合成に成功し、そのナノ構造や発光特性を報告しました。松本さんの優れた発表内容およびプレゼンテーション能力が高く評価され、今回の受賞となりました。

第16回次世代先端光科学研究会 (Invited)

2020年11月30日(月)に、第16回次世代先端光科学研究会が静岡大学浜松キャンパスにてハイブリッド開催されました。伊藤が参加し、「化学気相析出法を用いたHf系およびLu系蛍光体厚膜の気相合成」に関する研究成果発表を行いました。

日本学術振興会先進セラミックス第124委員会第161回研究会

日本学術振興会先進セラミックス第124委員会第161回研究会 「長繊維強化複合材料の創成と信頼性の向上 (その2)」 が、 2020年11月11日(水) にオンライン開催されました。伊藤が、耐環境セラミックスコーティングに関して話題提供発表を行いました。

※ 2020年3月12日に開催予定の第160回委員会ならびに研究会は、新型コロナウイルスの感染拡大予防のため延期となり、10月13日(火) および 11月11日(水) と2回に分けて開催されることになりました。

アルミナ–ハフニア秩序構造の気相合成に成功 :: Self-organization of alumina-hafnia nanocomposite (JCS-Japan, 2021)

松本昭源君 (D1) の研究成果が、Journal of the Ceramic Society of Japan 誌に受理されました。論文題目は、「Preparation of HfO2–Al2O3 nanocomposite films using chemical vapor deposition」です。

本研究成果は、Journal of the Ceramic Society of Japan 2021年1月号のCoverに選ばれました。研究成果に関する詳細は、追って公開します。

S. Matsumoto, A. Ito, Preparation of HfO2–Al2O3 nanocomposite films using chemical vapor deposition, Journal of the Ceramic Society of Japan. https://doi.org/10.2109/jcersj2.20156

ストロンチウムハフネートの化学気相析出における有機金属原料の選定 :: Selection of metal-organic precursors for strontium hafnate (JCS-Japan, 2021)

藤江清花さん (M1) の研究成果が、Journal of the Ceramic Society of Japan 誌に受理されました。論文題目は、「Precursor selection for metal–organic chemical vapor deposition of SrHfO3 films with Sr(dpm)2 and Sr(hfa)2」です。

ペロブスカイト型ジルコニウム酸化物やハフニウム酸化物 (AZrO3AHfO3: A = Ca, Sr および Ba) は、熱伝導度が低く、融点が高いことから、熱遮蔽コーティング材料として期待されます。本研究では、優れた遮熱性と硬度を兼ね備えた材料としてSrHfO3に着目しました。しかし、熱遮蔽コーティング法として主流の大気圧プラズマスプレー (APS) 法や電子ビーム物理蒸着 (EB-PVD) 法を含め、これまでSrHfO3膜の気相合成に関する研究報告はありませんでした。

藤江さんは、MOCVD法によるSrHfO3の気相合成を提案し、これを実現するためにまずSr有機金属化合物原料の選定を行いました。我々の研究室では、これまでSrのMO原料としてStrontium bis(dipivaloylmethanate) (Sr(dpm)2) を用いてM型ヘキサフェライト (SrM) 磁性結晶等の合成を行ってきましたが、本研究ではより高い蒸気圧と反応性を有する Strontium bis(hexafluoroacetylacetonate) (Sr(hfa)2) に着目し、両原料を用いた比較実験を通じて、Sr(hfa)2原料を用いたSrHfO3のCVD合成に成功しました。

Sr(hfa)2 or Sr(dpm)2

S. Fujie, A. Ito, Precursor selection for metal–organic chemical vapor deposition of SrHfO3 films with Sr(dpm)2 and Sr(hfa)2, Journal of the Ceramic Society of Japan. https://doi.org/10.2109/jcersj2.20157

透明厚膜蛍光体の高速気相成長法の確立 :: CVD route to transparent thick films of Eu-doped hafnia and lutetia for phosphors (Opt. Mater. Express, 2020)

松本昭源君 (M2) の研究成果が、米国光学学会 Optical Materials Express 誌に受理されました。論文題目は「Chemical Vapor Deposition Route to Transparent Thick Films of Eu3+-doped HfO2 and Lu2O3 for Luminescent Phosphors」です。本研究は、Open Access 論文として一般公開されます。

伊藤研究室では、セラミックス光学材料の製造プロセスとして高速化学気相析出法を研究しており、 溶解凝固法や焼結法を代替する合成ルートとして提案しています。一般に、セラミックス光学材料には、溶解凝固法により育成した単結晶セラミックスが広く用いられます。しかし、超高融点セラミックスでは、溶融に大きなエネルギーが必要となり、超高温融液の保持も簡単ではありません。近年、セラミックス粉末を焼結することで、単結晶に匹敵する透明多結晶セラミックスを製造する技術が注目されています。しかし、優れた透光性を引き出すためには、原料粉末の調整や予備処理のノウハウが決め手となります。また、温度変化によって可逆的相転移を示すセラミックス材料を合成する際、 溶解凝固法や焼結法では、相転移に伴う体積変化による結晶の割れが問題となります。

超高融点セラミックスの中でも、酸化ハフニウム (HfO2) や酸化ルテチウム (Lu2O3) は、ワイドバンドギャップ (5.8および5.5 eV)、高密度 (10.1および9.5 Mg m−3)、高有効原子番号 (67.3および67.4) を示し、シンチレーターやレーザー向けのホスト光学材料として注目されます。しかしながら、これらの材料は超高融点 (それぞれ3031および2763 K) であり、特にHfO2は、温度によって単斜晶⇔正方晶⇔立方晶の間で可逆的に相転移するため、溶融凝固法や焼結法では光学結晶を合成することが困難でした。

Graphical abstract for “CVD Route to Transparent Thick Films (CVD-TTF) for sheet-type scintillators and gain media in thin disc laser”
Graphical abstract for “CVD Route to Transparent Thick Films (CVD-TTF) for sheet-type scintillators and gain media in thin disc laser”

本研究では、レーザー加熱CVD法を用いて単斜晶HfO2および立方晶Lu2O3の透明厚膜の高速化学気相析出に成功しました。HfやLu原料ガスとともにEu原料ガスを同時供給することで、Eu3+イオンをHfO2およびLu2O3中に均一にドープすることが可能であり、紫外線照射下にてEu3+イオンの5D07FJ遷移に起因する顕著な赤色蛍光を示す透明蛍光体厚膜が得られました。蛍光発光および蛍光励起スペクトルは、VRBE (Vacuum Referred Binding Energy) スキームおよびDiekeダイアグラムとともに考察しました。Eu3+イオンは、配位子場環境によって5D07FJ遷移の発光強度比が異なることが知られており、蛍光スペクトルからもHfO2単斜晶相の気相成長を確認できます。本研究は、レーザー加熱CVD法がセラミックス光学結晶の迅速製造プロセスとして有効な合成ルートであることを示すものです。

Graphical abstract for “CVD Route to Transparent Thick Films (CVD-TTF) of Europium-doped Monoclinic Hafnia and Cubic Lutetia”
Graphical abstract for “CVD Route to Transparent Thick Films (CVD-TTF) of Europium-doped Monoclinic Hafnia and Cubic Lutetia”

伊藤暁彦研究室では引き続き、ハフニウム系やルテチウム系酸化物を中心に、光学材料として期待される超高融点材料、難焼結材料、非平衡相材料の高速化学気相析出に関する研究を進める一方、共同研究を通じてその機械的特性や光学的特性を明らかにしていきます。

尚、本研究成果の一部は、日本学術振興会科研費・基盤研究 (17H03426、17H01319および18H01887)、横浜工業会・令和元年度学術研究推進援助事業の支援を受けて得られたものです。


S. Matsumoto, A. Ito, Chemical Vapor Deposition Route to Transparent Thick Films of Europium-doped Hafnia and Lutetia for Luminescent Phosphor, Optical Materials Express. https://doi.org/10.1364/OME.386425

Link to ScienceDirect Topics: hafnium, lutetium, luminescence, luminescent-material