Japan-India YNU symposium 2020

2020年12月27-28日に、Japan‐India YNU Symposium 2020がオンライン開催されました。伊藤研究室からは、松本、川田、藤江、三觜が参加して、研究成果をオンラインポスター発表しました。

新学術「機能コア」 第4回遠隔連携会議

新学術領域研究「機能コアの材料科学」第4回遠隔連携会議が、 2020年10月30日(金) に開催されました。伊藤が、公募研究「高速化学気相析出法を駆使して導入した欠陥構造を高効率発光源とする透明蛍光体」に関して話題提供発表を行いました。

レーザーを援用した化学気相析出法によるセラミックスの自己配向成長 :: Self-oriented growth of engineering and functional ceramics using CVD (CERAMICS JAPAN, 2020)

本学への赴任後、学生と一緒に設計・製作した合成装置を用いて、2018年~2019年に得た研究成果の一部を、セラミックス誌に解説記事としてまとめました。題目は、「レーザーを援用した化学気相析出法によるセラミックスの自己配向成長」です。2020年2月号の特集「レーザーテクノロジーとセラミックス」に掲載されます。

「理想的な立方晶系からわずかに歪んだだけの単斜晶系や三斜晶系のセラミックス材料においても、各結晶面方位への選択的自己配向成長は実現できるのか?」「単結晶様成長を維持したまま、エピタキシャル成長はどこまで高速化できるのか?」といった研究課題に取り組んだ研究成果を紹介しています。

自己配向成長技術の事例として、超高融点酸化物構造材料 酸化ハフニウム、クロミック材料 酸化タングステン、地殻鉱物 マグネシウムシリケートの研究成果を紹介しています。また、 高速エピタキシャル成長技術を、融液からの結晶成長が難しい超高融点酸化物や不一致溶融化合物の結晶成長に適用した事例として、 単斜晶ハフニウム蛍光体やイットリウムフェライトガーネット磁気光学結晶の単結晶様成長に関する研究成果を紹介しています。

自己配向成長は、下地基板を選ばずに結晶配向成長を実現できることから、例えば切削工具やガスタービンブレードなど、過酷な環境で運用される基材を保護するコーティングとして幅広く適用できます。耐環境性コーティングの競合技術としては、溶射法や電子ビーム物理気相蒸着法がありますが、組織制御性や高融点材料対応の点で、 化学気相析出法 に分があります。伊藤研究室では、二の矢三の矢を仕込み中であり、 世界トップレベルの革新的セラミックスコーティングの創出を目指します。

高速エピタキシャル成長は、一般的なエピタキシャル成長の十~百倍程度の結晶成長速度を実現できます。気相法では、融点の半分以下の温度で単結晶成長が可能であり、これまで溶融法では合成が困難であった超高融点酸化物、可逆的相転移化合物、不一致溶融化合物や準安定相化合物をも含むセラミックス材料の単結晶成長プロセスとして利用できます。将来的には、マテリアルズインフォマティクスやサイバーフィジカルシステムと連携した機能性結晶のラピッドプロトタイピングおよび未踏材料探索の場として、本技術を発展させていくことを目指しています。

尚、SiC/SiC-CMC向け繊維コーティング技術に関する解説記事、セラミックス一般に関する書籍記事、セラミックスコーティングに関する書籍記事について、今春入稿予定で執筆中です。

ケイ酸マグネシウムの選択的自己配向成長 :: Self-oriented growth of magnesium silicates, forsterite and orthopyroxene, for optical materials (Ceram. Int., 2019)

伊海雅和君 (2019年3月修了) の研究成果が、Ceramics International 誌に受理されました。論文題目は、「Self-oriented growth of (020) MgSiO3-orthopyroxene and (002) α-Mg2SiO4 films using metal-organic chemical vapor deposition」です。

MgSiO3は、地殻や隕石中に見いだされる鉱物であり、様々な結晶多形 (orthopyroxene (opx), clinopyroxene (cpx), protopyroxene (ppx), garnet, ilmeniteおよびperovskite) をとります。一方、Mg2SiO4も多形をとり、α相はフォルステライトと呼ばれ、ファインセラミックスとして電子部品や回路基板に用いられます。また、賦活元素をドープしたα-Mg2SiO4結晶は、レーザー媒質としても利用されます。

伊海君は、 Mg–Si–O系セラミックスの化学気相析出 (CVD: Chemical Vapor Deposition) に関する研究を進める中で、MgSiO3-opxおよび α-Mg2SiO4単相膜の合成に成功し、これらの化合物が自発的に結晶方位を揃えて気相成長する自己配向成長効果 (self-oriented growth) を見出しました。この自己配向成長効果は、 結晶学の観点から整理しました。

Graphical abstract for “Self-oriented growth of magnesium silicates, forsterite and orthopyroxene”
Graphical abstract for “Self-oriented growth of magnesium silicates, forsterite and orthopyroxene”

伊藤暁彦研究室では引き続き、CVD法を用いたMg–Si–O系セラミックスの材料探索や結晶成長プロセス開発、光学特性の評価を行っていきます。

尚、本研究成果の一部は、日本学術振興会科研費・基盤研究 (B) (17H03426) の支援を受けて得られたものです。


M. Ikai, A. Ito, Self-oriented growth of (020) MgSiO3-orthopyroxene and (002) α-Mg2SiO4 films using metal-organic chemical vapor deposition, Ceramics International. http://doi.org/10.1016/j.ceramint.2019.03.212.

Link to ScienceDirect topics: garnetilmenite and perovskite