MRM Forum 2020 ★ 優秀若手発表賞

MRM Forum 2020 が、2020年12月7日(月)~9日(水)、オンライン開催されました。 伊藤研究室からは、松本、三觜、藤江が参加し、TS-9 Smart processing のセッションにて研究成果をオンラインポスター発表しました。

研究発表を評価して頂き、松本が優秀若手発表賞を受賞することができました (MRM Forum 2020公式発表)。研究内容と受賞者の写真を添えた学府のリリースは、こちらです。

発表題目は、「化学気相析出法を用いたHfO2透明厚膜の高速エピタキシャル成長とその蛍光特性評価」です。がんの早期発見や空港での手荷物検査の場では、X線を用いた画像診断法が用いられます。少量のX線照射で効率よく撮像を行うためには、優れたシンチレータ結晶が求められます。酸化ハフニウム (HfO2) は、高いX線阻止能を有することから、シンチレータ材料として有望です。一方、融点が高く温度変化に対して可逆相転移を示すことから、従来の溶融凝固法での結晶育成が困難でした。松本さんは、気相法を用いた酸化ハフニウムの透明厚膜蛍光体の高速合成に成功し、そのナノ構造や発光特性を報告しました。松本さんの優れた発表内容およびプレゼンテーション能力が高く評価され、今回の受賞となりました。

ナノ柱状晶からなる透明多結晶厚膜の提案 :: Strontium titanate transparent thick film composed of close-packed nanocolumns (Vacuum, 2020)

Jianchao Chen氏、後藤 孝教授 (東北大学) との研究成果が、Vacuum 誌に受理されました。論文題目は、「High-speed epitaxial growth of SrTiO3 transparent thick films composed of close-packed nanocolumns using laser chemical vapor deposition」です。

単結晶バルク体や薄膜は、高い透光性を示しますが、平滑な表面からなることから比表面積は小さくなります。一方、多孔質体は、大きな比表面積を有しますが、光の散乱により一般的には不透明となります。もし高い透光性と比表面積を両立した材料を合成することができれば、新たな光触媒材料への応用が期待できます。

本研究では、レーザーCVD法を用いてMgAl2O4単結晶基板上にSrTiO3厚膜を高速エピタキシャル成長させました。SrTiO3厚膜は高い透光性を示し、SEM電顕観察においては緻密な構造が観察されていましたが、TEM電顕観察を通じて、この厚膜はナノサイズのSrTiO3柱状晶が密に集合した構造を持っていることを明らかにしました。

尚、本研究成果の一部は、日本学術振興会科研費・基盤研究 (B) (17H03426) 他の支援を受けて得られたものです。


J. Chen, A. Ito, T. Goto, High-speed epitaxial growth of SrTiO3 transparent thick films composed of close-packed nanocolumns using laser chemical vapor deposition, Vacuum. https://doi.org/10.1016/j.vacuum.2020.109424