ICACC 2020 (Invited)
レーザーを援用した化学気相析出法によるセラミックスの自己配向成長 :: Self-oriented growth of engineering and functional ceramics using CVD (CERAMICS JAPAN, 2020)
本学への赴任後、学生と一緒に設計・製作した合成装置を用いて、2018年~2019年に得た研究成果の一部を、セラミックス誌に解説記事としてまとめました。題目は、「レーザーを援用した化学気相析出法によるセラミックスの自己配向成長」です。2020年2月号の特集「レーザーテクノロジーとセラミックス」に掲載されます。
「理想的な立方晶系からわずかに歪んだだけの単斜晶系や三斜晶系のセラミックス材料においても、各結晶面方位への選択的自己配向成長は実現できるのか?」「単結晶様成長を維持したまま、エピタキシャル成長はどこまで高速化できるのか?」といった研究課題に取り組んだ研究成果を紹介しています。
自己配向成長技術の事例として、超高融点酸化物構造材料 酸化ハフニウム、クロミック材料 酸化タングステン、地殻鉱物 マグネシウムシリケートの研究成果を紹介しています。また、 高速エピタキシャル成長技術を、融液からの結晶成長が難しい超高融点酸化物や不一致溶融化合物の結晶成長に適用した事例として、 単斜晶ハフニウム蛍光体やイットリウムフェライトガーネット磁気光学結晶の単結晶様成長に関する研究成果を紹介しています。
自己配向成長は、下地基板を選ばずに結晶配向成長を実現できることから、例えば切削工具やガスタービンブレードなど、過酷な環境で運用される基材を保護するコーティングとして幅広く適用できます。耐環境性コーティングの競合技術としては、溶射法や電子ビーム物理気相蒸着法がありますが、組織制御性や高融点材料対応の点で、 化学気相析出法 に分があります。伊藤研究室では、二の矢三の矢を仕込み中であり、 世界トップレベルの革新的セラミックスコーティングの創出を目指します。
高速エピタキシャル成長は、一般的なエピタキシャル成長の十~百倍程度の結晶成長速度を実現できます。気相法では、融点の半分以下の温度で単結晶成長が可能であり、これまで溶融法では合成が困難であった超高融点酸化物、可逆的相転移化合物、不一致溶融化合物や準安定相化合物をも含むセラミックス材料の単結晶成長プロセスとして利用できます。将来的には、マテリアルズインフォマティクスやサイバーフィジカルシステムと連携した機能性結晶のラピッドプロトタイピングおよび未踏材料探索の場として、本技術を発展させていくことを目指しています。
尚、SiC/SiC-CMC向け繊維コーティング技術に関する解説記事、セラミックス一般に関する書籍記事、セラミックスコーティングに関する書籍記事について、今春入稿予定で執筆中です。
希土類シリケート系耐環境コーティングのCVD合成に成功 :: First CVD of ytterbium silicates for environmental barrier coatings (Ceram. Int., 2020)
SIP-SM4I プロジェクトで取り組んできた研究成果の一部が、Ceramics International 誌に受理されました。原朋弘君 (2018年度修了) の研究成果が含まれます。論文題目は、「Self-oriented growth of β-Yb2Si2O7 and X1/X2-Yb2SiO5 coatings using laser chemical vapor deposition」です。
戦略的イノベーション創造プログラム (SIP: Strategic Innovation Program) 「革新的構造材料 (SM4I: Structural Materials for Innovation」では、「強く、軽く、熱に耐える材料を航空機へ」をモットーに、研究開発が推進されてきました。SiC繊維強化SiCセラミックス複合材料 (SiC/SiC-CMC) は、現用の耐熱合金を代替し、タービンブレードの軽量化と耐熱性向上に貢献する材料です。民間機エンジンの高温部材の一部に採用がはじまっていますが、今後さらに適用範囲を拡げていくためには、部材を高温の酸素・水蒸気雰囲気から保護する耐環境コーティング (EBC: Environmental Barrier Coating) の開発が必須です。
Ybシリケート (Yb2Si2O7およびYb2SiO5) は、高温水蒸気雰囲気下での耐減肉性に優れることから、EBC材料として期待されます。 化学気相析出 (CVD: Chemical Vapor Deposition) 法は、原料ガスの基材上での析出反応を利用したコーティング手法であり、複雑形状物を比較的高速に被覆できる特長があります。しかし、シリケート化合物はガラス相が生成しやすく、これまでCVD法を用いて結晶質のYbシリケートを得ることは困難でした。
本論文では、熱CVD法とレーザー加熱CVD法を用いてYbシリケート膜を合成し、それぞれのCVDプロセスにおいて、成膜温度がYbシリケート膜の生成相や結晶配向、微細組織に与える影響を明らかにしました。 Ybシリケートが自発的に結晶方位を揃えて気相成長する自己配向成長効果 (self-oriented growth) を見出し、各結晶相の自己配向成長効果を結晶学の観点から整理しました。さらに、熱処理試験による各被膜の微細構造の変化を調べました。
伊藤暁彦研究室では引き続き、CVD法を用いた繊維強化セラミックス複合材料の信頼性向上に向けたコーティング技術および材料探索を行っていきます。
本研究成果は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議 戦略的イノベーション創造プログラム「革新的構造材料」『耐環境セラミックスコーティングの構造最適化及び信頼性向上 』 (管理法人: JST) の支援を受けて得られたものです。 本研究成果の一部は、日本学術振興会 科研費・基盤研究 (B) (17H03426) の支援を受けて得られたものです。
A. Ito, M. Sekiyama, T. Hara, T. Goto, Self-oriented growth of β-Yb2Si2O7 and X1/X2-Yb2SiO5 coatings using laser chemical vapor deposition, Ceramics International. http://doi.org/10.1016/j.ceramint.2019.12.217.
Link to ScienceDirect topics: silicate
第14回セラフェス ★ 最優秀発表賞・奨励賞
MRM2019
Materials Research Meeting 2019 (MRM2019) が、2019年12月10日(火)~14日(金)、横浜シンポジアにて開催されました。 伊藤研究室からは、松本が参加し、Hard and Tough Ceramics のセッションにて研究発表しました。
第35回宇宙構造・材料シンポジウム
第35回宇宙構造・材料シンポジウムが、2019年12月2日(月)、宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 相模原キャンパスで開催されました。 伊藤研究室からは、伊藤が参加して研究発表してきました。
JK-Ceramics 36 (Invited)
The 36th International Japan-Korea Seminar on Ceramics が、2019年11月20日(水)~23日(土)、鳥取県とりぎん文化会館にて開催されました。伊藤研究室からは、伊藤が参加して H. Thin Films and Coatings セッションで招待講演しました。
PACRIM13
The 13th Pacific Rim Conference of Ceramic Societies (PACRIM13) が、2019年10月27日(日)~11月1日(金)、沖縄県コンベンションセンターにて開催されました。伊藤研究室からは、伊藤と松本が参加し、それぞれ Multifunctional Coatings for Structural, Energy and Environmental Applications および Engineering Ceramics: Processing and Characterization のセッションにて研究発表しました。
第22回セラ協関西支部若手 (Invited)
日本セラミックス協会 関西支部 第22回 若手フォーラム が、2019年10月17日(木)~18日(金)、ホテルフクラシア大阪ベイにて開催されます。伊藤研究室からは、松本が参加しました。関東支部 最優秀賞受賞者として、 研究紹介しました。