酸化タングステンの選択的自己配向成長 :: Selective self-oriented growth of tungsten trioxide for electro- and gas-chromic materials (Mater. Lett., 2020)

森下裕貴君 (B4) の研究成果が、Materials Letters 誌に受理されました。論文題目は、「Selective self-oriented growth of (200), (002) and (020) δ-WO3 films via metal-organic chemical vapor deposition」です。

WO3は、電圧印加やガス吸着により光学的特性が変化する物性を示し、それぞれをエレクトロクロミズムおよびガスクロミズムと呼びます。これら物性の用途として、調光ガラスやガスセンサが挙げられます。また、WO3は、光触媒材料としても期待されます。

森下君は、WO3系セラミックスの化学気相析出 (CVD: Chemical Vapor Deposition) に関する研究を進める中で、δ相WO3単相膜の高速CVD合成に成功し、従来CVD法の2倍~350倍の成膜速度を達成しました。また、これらの化合物が自発的に結晶方位を揃えて気相成長する自己配向成長効果 (self-oriented growth) を見出しました。さらに、W原料の気化温度により、自己配向成長方位を、(200)面、(002)面、(020)面にそれぞれ制御することが出来ました。

Graphical abstract for "Self-oriented growth of tungsten trioxide"
Graphical abstract for “Self-oriented growth of tungsten trioxide”

伊藤暁彦研究室では引き続き、CVD法により合成したWO3の光学的特性や触媒特性の評価を進める一方、タングステン系セラミックスの材料探索を行っていきます。

尚、本研究成果の一部は、日本学術振興会科研費・基盤研究 (B) (17H03426) の支援を受けて得られたものです。


A. Ito, Y. Morishita, Selective self-oriented growth of (200), (002), and (020) δ-WO3 films via metal-organic chemical vapor deposition, Materials Letters. http://doi.org/10.1016/j.matlet.2019.126817.

耐環境コーティング向けハフニアの選択的自己配向成長 :: Selective self-oriented growth of hafnia for environmental barrier coating (Ceram. Int., 2020)

松本昭源君 (M2) の研究成果が、Ceramics International 誌に受理されました。論文題目は、「Highly self-oriented growth of (020) and (002) monoclinic HfO2 thick films using laser chemical vapor deposition」です。

HfO2 (酸化ハフニウム) は、融点が高く、靭性や遮熱性に優れる高温構造材料です。切削工具向けの硬質コーティングや航空機向けターボファンエンジンの耐環境性コーティングへの応用が期待されます。松本君は、HfO2の化学気相析出 (CVD: Chemical Vapor Deposition) に関する研究を進める中で、単斜晶HfO2が自発的に結晶方位を揃えて気相成長する自己配向成長効果 (self-oriented growth) を見出しました。

本論文では、熱CVD法とレーザー加熱CVD法を用いてHfO2膜を合成し、それぞれのCVDプロセスにおいて、成膜温度がHfO2膜の結晶配向や微細組織、成膜速度に与える影響を明らかにしました。特に、c面配向HfO2膜については、透過型電子顕微鏡を用いた組織観察を行い、c面配向HfO2膜を構成する柱状晶は単結晶様であることを明確にしました。また、自己配向成長効果を、結晶学の観点から考察しました。

Graphical abstract for “Selective self-oriented growth of hafnia”
Graphical abstract for “Selective self-oriented growth of hafnia”

伊藤暁彦研究室では引き続き、CVD法により合成したHfO2の機械的特性や光学的特性の評価を進める一方、ハフネート系セラミックスの材料探索を行っていきます。

尚、本研究成果の一部は、日本学術振興会科研費・基盤研究 (B) (17H03426) の支援を受けて得られたものです。


S. Matsumoto, Y. Kaneda, A. Ito, Highly self-oriented growth of (020) and (002) monoclinic HfO2 thick films using laser chemical vapor deposition, Ceramics International. http://doi.org/10.1016/j.ceramint.2019.09.156.

Link to ScienceDirect Topics: hafnium

ケイ酸マグネシウムの選択的自己配向成長 :: Self-oriented growth of magnesium silicates, forsterite and orthopyroxene, for optical materials (Ceram. Int., 2019)

伊海雅和君 (2019年3月修了) の研究成果が、Ceramics International 誌に受理されました。論文題目は、「Self-oriented growth of (020) MgSiO3-orthopyroxene and (002) α-Mg2SiO4 films using metal-organic chemical vapor deposition」です。

MgSiO3は、地殻や隕石中に見いだされる鉱物であり、様々な結晶多形 (orthopyroxene (opx), clinopyroxene (cpx), protopyroxene (ppx), garnet, ilmeniteおよびperovskite) をとります。一方、Mg2SiO4も多形をとり、α相はフォルステライトと呼ばれ、ファインセラミックスとして電子部品や回路基板に用いられます。また、賦活元素をドープしたα-Mg2SiO4結晶は、レーザー媒質としても利用されます。

伊海君は、 Mg–Si–O系セラミックスの化学気相析出 (CVD: Chemical Vapor Deposition) に関する研究を進める中で、MgSiO3-opxおよび α-Mg2SiO4単相膜の合成に成功し、これらの化合物が自発的に結晶方位を揃えて気相成長する自己配向成長効果 (self-oriented growth) を見出しました。この自己配向成長効果は、 結晶学の観点から整理しました。

Graphical abstract for “Self-oriented growth of magnesium silicates, forsterite and orthopyroxene”
Graphical abstract for “Self-oriented growth of magnesium silicates, forsterite and orthopyroxene”

伊藤暁彦研究室では引き続き、CVD法を用いたMg–Si–O系セラミックスの材料探索や結晶成長プロセス開発、光学特性の評価を行っていきます。

尚、本研究成果の一部は、日本学術振興会科研費・基盤研究 (B) (17H03426) の支援を受けて得られたものです。


M. Ikai, A. Ito, Self-oriented growth of (020) MgSiO3-orthopyroxene and (002) α-Mg2SiO4 films using metal-organic chemical vapor deposition, Ceramics International. http://doi.org/10.1016/j.ceramint.2019.03.212.

Link to ScienceDirect topics: garnetilmenite and perovskite