希土類シリケート系耐環境コーティングのCVD合成に成功 :: First CVD of ytterbium silicates for environmental barrier coatings (Ceram. Int., 2020)

SIP-SM4I プロジェクトで取り組んできた研究成果の一部が、Ceramics International 誌に受理されました。原朋弘君 (2018年度修了) の研究成果が含まれます。論文題目は、「Self-oriented growth of β-Yb2Si2O7 and X1/X2-Yb2SiO5 coatings using laser chemical vapor deposition」です。

戦略的イノベーション創造プログラム (SIP: Strategic Innovation Program) 「革新的構造材料 (SM4I: Structural Materials for Innovation」では、「強く、軽く、熱に耐える材料を航空機へ」をモットーに、研究開発が推進されてきました。SiC繊維強化SiCセラミックス複合材料 (SiC/SiC-CMC) は、現用の耐熱合金を代替し、タービンブレードの軽量化と耐熱性向上に貢献する材料です。民間機エンジンの高温部材の一部に採用がはじまっていますが、今後さらに適用範囲を拡げていくためには、部材を高温の酸素・水蒸気雰囲気から保護する耐環境コーティング (EBC: Environmental Barrier Coating) の開発が必須です。

A schematic of turbofan engine for airplanes
A schematic of a turbofan engine for airplanes. “3D Printable Jet Engine” modeled by CATIAV5FTW licensed under CC-BY-NC 4.0.

Ybシリケート (Yb2Si2O7およびYb2SiO5) は、高温水蒸気雰囲気下での耐減肉性に優れることから、EBC材料として期待されます。 化学気相析出 (CVD: Chemical Vapor Deposition) 法は、原料ガスの基材上での析出反応を利用したコーティング手法であり、複雑形状物を比較的高速に被覆できる特長があります。しかし、シリケート化合物はガラス相が生成しやすく、これまでCVD法を用いて結晶質のYbシリケートを得ることは困難でした。

本論文では、熱CVD法とレーザー加熱CVD法を用いてYbシリケート膜を合成し、それぞれのCVDプロセスにおいて、成膜温度がYbシリケート膜の生成相や結晶配向、微細組織に与える影響を明らかにしました。 Ybシリケートが自発的に結晶方位を揃えて気相成長する自己配向成長効果 (self-oriented growth) を見出し、各結晶相の自己配向成長効果を結晶学の観点から整理しました。さらに、熱処理試験による各被膜の微細構造の変化を調べました。

Graphical abstract for "Self-oriented growth of ytterbium silicates via chemical vapor deposition"
Graphical abstract for “Self-oriented growth of ytterbium silicates via chemical vapor deposition

伊藤暁彦研究室では引き続き、CVD法を用いた繊維強化セラミックス複合材料の信頼性向上に向けたコーティング技術および材料探索を行っていきます。

本研究成果は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議 戦略的イノベーション創造プログラム「革新的構造材料」『耐環境セラミックスコーティングの構造最適化及び信頼性向上 』 (管理法人: JST) の支援を受けて得られたものです。 本研究成果の一部は、日本学術振興会 科研費・基盤研究 (B) (17H03426) の支援を受けて得られたものです。

A. Ito, M. Sekiyama, T. Hara, T. Goto, Self-oriented growth of β-Yb2Si2O7 and X1/X2-Yb2SiO5 coatings using laser chemical vapor deposition, Ceramics International. http://doi.org/10.1016/j.ceramint.2019.12.217.

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